給与の未払いと破産2 ~給与立て替え払い制度の要件~
従業員がいる会社(法人)または個人事業主が、給与未払いのまま破産申立をした場合、その支払いはどうなるでしょうか?
会社(法人)または個人事業主に資産が残っている場合は、破産債権(貸付金や買掛金など)に優先して、財団債権(破産開始決定から3が月以内に働いた分の給与)、優先破産債権(財団債権に当たらない給与) として支払われる点は、別の記事で書いています。 では、会社(法人)または個人事業主に資産が残っていない場合は、どうなるでしょうか?
この場合、給与の立て替え払いをしてくれる制度があります。 「賃金の支払いの確保等に関する法律7条」(ただし、細かい基準はほとんど施行令に委任して規定している)という法律に基づき「独立行政法人労働者健康福祉機構」というところが立て替え払いをしてくれます。
しかし、給与の立て替え払いをしてもらうには、いろいろな要件があります。 この記事では、その要件について、記載します。
おおむね、要件は以下の5つです。
【1】1年以上の事業継続
給与の立て替え払い制度を受けるには、1年以上の事業継続(労災補償保険の適用を受ける事業を1年以上すること)が要件です。つまり、従業員を雇用していた期間が1年以上必要で、事業をしていても従業員がいない場合や期間は1年に算入されません。
ちなみに、雇用主には労働保険に加入することが法的に義務づけられていますが、この義務を果たさず、労働保険未加入でも給与立替制度は使えます。つまり、労災の適用を受けるべき事業をしていれば足り、実際に労災に入っていることは要件ではないのです。
【2】事業規模はある程度小さくても適用対象
この制度は、中小企業に対する制度だから、この要件があります。
具体的には、下記の表のとおりです。
| 業種 | 資本の額又は出資の総額 A | 常時使用する労働者数 B |
|---|---|---|
| 一般産業(卸売業、サービス業、小売業を除く) | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
AとBの条件は、「または」であり、でいずれかの条件を満たしていれば適用対象です。
例えば、卸売業でいうと、常時使用する労働者数が100人を超えていても、資本金が1億円以下であれば適用対象です。
【3】退職日から6ヶ月以内に破産の申し立てがあったこと
ただし、破産の申し立てがない場合でも、労働基準監督署の「事実上倒産の認定」があれば、給与の立て替え払い制度が使えます。
【4】事業内容による制限はあまりありませんが、農水産業の一部に適用がない事業があります
【5】破産申立または労働基準監督署の「事実上倒産の認定」があった日から請求までの期間の制限があり、それらの翌日から2年以内に立替払いの請求をする必要があります
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