給与の未払いと破産1 ~破産企業・事業者に資産が残っている場合~

会社(法人)または個人事業主で従業員がいる場合、給与未払いのまま破産申立をした際、その支払いはどうなるでしょうか?

破産手続きにおいては、一般的に、債権者は債権額に応じて、破産した会社や事業者に残っていた資産から案分して配当を受けます。つまり、平等が重んじられます。

しかし、破産手続きにおける債権は、すべてが同列に扱われるわけではなく、破産債権、優先的破産債権、財団債権などいくつかに種類がわかれます。 上記の平等に案分した配当を受けるというのは破産債権(貸付金や買掛金など)の場合です。 税金や給与などは、優先的破産債権(破産法98条)、財団債権(破産法148条~152条)などに当たり、破産債権に優先して払ってもらえます。 給与は、従業員の生活の糧となるため、普通の債権より優先して払わなければならないという考えがあるのです。

優先的破産債権と財団債権間の優先順位ですが、財団債権が優先して支払われます。 では、給与の場合、どういう場合が財団債権で、どういう場合が優先的破産債権となるのか?

まず、破産開始決定日から3か月前の給与が財団債権で、優先的破産債権より優先して払ってもらえます。 破産開始決定から3か月前までの働いた分とは、例えば、破産開始決定が1月1日とすると、10月1日~12月31日まで働いた分であり、給与支給日が10月1日でも、その給与が9月分(9/1~9/30に働いた分)であれば、それは財団債権にならず、優先的破産債権になります(破産・民事再生の実務[新版]中P85)。

破産開始決定から3か月以上前の給与は、優先的破産債権となります。 優先的破産債権は、財団債権を払った後に、まだ破産した会社(法人)・事業者に財産が残っている場合は、破産債権(貸付金や買掛金など)に優先して払ってもらえます。

次に、優先的破産債権が税金や給与等いろいろあり、事業者に残っている財産ですべて払えない場合、優先的破産債権間の優先順位が問題となります。これは、民法、商法、その他の法律の定めるところによることになっており(破産法98条1項)、簡単には説明できません。

では、事業者に残っている財産ですべての財団債権を払えない場合はどうなるか?

この場合、法律上の優先順位に関わらず、金額に案分して平等に支払われます(破産法152条1項)。ただし、破産法148条の1号「破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(管財人の報酬等)」と2号「破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権」は、同じ財団債権の中でも優先して払われます。 したがって、破産手続き開始決定から3か月以内の給与も、上記の破産法148条の1号、2号の債権を先に支払った後に支払われることになります。

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