住宅ローンの変動金利の引き上げと個人再生

住宅ローンを借りる際、固定金利と変動金利があります。
固定金利は、変動金利より高めに設定されていますが、その後の金利の変動に左右されにくいというメリットがあります。
変動金利は、固定金利より低めに設定されますが、その後の金利の変動に連動して変動する仕組みです。したがって、借り入れ当初の金利のまま、ずっと借りられるわけではありません。住宅ローンは返済期間が30年余りなので、長い期間の間に金利が上がったり下がったり可能性があります。

日本は長い間、低金利の時代だったので、住宅ローンの借入金利は比較的低く、借入後も変動金利の利率があまり上がることはありませんでした。しかし、ここ最近、住宅ローンの変動金利が上がる傾向にあるようです。
例えば、みずほ銀行は、住宅ローンの新規借り入れの基準を0.25%上げると発表しました(令和7年9月30日)。これまでの金利が0.5%だったとすると0.75%になります。住宅ローンが3000万円だったとすると年間7万5000円の上昇なので、家計にも痛手になると思います。

変動金利が上がったからと言って、ただちに住宅ローンが払えなくなることはあまりないかもしれませんが、参考までに、住宅ローンの返済が難しくなった場合の法的整理の方法をご紹介します。
「住宅資金特別条項付き個人再生」というものです。
個人再生は、一般的に、裁判所の許可を得て借金を減額してもらうものですが、住宅資金特別条項付き個人再生とは、住宅ローンを払いつつ、それ以外の借金のみ減額してもらうことができるものです。

この住宅資金特別条項付き個人再生を使うと、住宅ローンの支払い方法を楽にすることもできます。ただし、金利を下げてもらえるわけではありません。

一つは、住宅ローンの支払期限を延ばしてもらうものです。法律上、完済時が70歳未満の契約の場合、70歳までは延長してもらえます。ただし、70歳以上の延長には金融機関の同意が必要です。こちらは毎月の住宅ローンの支払い額は減りますが、住宅ローンの借り入れ期間が長くなるので、支払う金利の総額は増えてしまいます。

もう一つは、一般の再生債権を支払っている3~5年の期間だけ住宅ローンを減らしてもらうものです。こちらは、3~5年の間は住宅ローンの支払い額が減る分、その後の支払い額が逆に増えてしまいます。

これら二つのやり方を併用することもできます。

ところで、個人再生は、住宅ローン以外の債務もあるのが一般的です。その場合、住宅ローンは減額せずに返すが、それ以外の借金は減額してもらうものですが、住宅ローンしか借金がない場合も住宅資金条項付き個人再生はできることになっています(個人再生の実務Q&A120問P195)。 ただし、住宅の評価額より残っている住宅ローンのほうが少ない場合、差額相当分の財産を有していることになり、個人再生の要件である「支払い不能の恐れ」がないとされる可能性がるので注意が必要です。

借金が住宅ローンしかない場合に、住宅ローン会社に相談して、任意でリスケジュールしてもらえることが多いのではないかと思います。それができない場合は、住宅ローン以外の債務がなくても、住宅資金特別条項付き個人再生をすることも一つの選択肢です。