「借金減額」「借金救済」について

最近、よくインターネット上で「借金減額」「借金救済」という広告文言を目にします。
「借金減額」「借金救済」は、おそらく、いずれも同じような意味で使われているかと思います。
これは、いわゆる債務整理で、具体的に言うと、破産、個人再生、任意整理のいずれかの方法で「借金減額」「借金救済」を実現するということです。
これら3つの「借金減額」「借金救済」の仕組みを簡単に説明します。

破産・免責

破産・免責とは、裁判所に申し立てをして、裁判官の判断で借金を全額免除してもらう手続きのことです。
この手続きは「破産」と「免責」という手続きがセットになったものですが、これらを分けて説明したいと思います。

「破産」とは、借金が多くて、ご自分の収入や財産では返せない状況の場合(「支払い不能」と言います)、清算(財産があればお金に換えて債権者に配当しなければならないので、配当がないことを債権者に報告すること)をすることを指します。「破産」の申し立ては「免責」の申し立てとセットになっています。

「免責」とは文字どおり責任を免除する、すなわち、借金を免除するということです。「免責」の許可をするかは裁判官が判断するので、100%間違いなく出るというわけではありません。しかし、許可されれば、免責の対象とならないもの(税金、社会保険料等)以外は、全額払わなくていい状態に借金が減額されます。

個人再生

個人再生も破産・免責と同様に裁判所に申し立てます。破産と違う点は、借金の一部を払い、残りを免除されるというかたちの借金減額法であることです。

個人再生は「小規模個人再生」と「給与所得者個人再生」の2種類があります。ここでは、小規模個人再生において、どのようなルールで借金減額になるか、について説明します。

小規模個人再生は、以下の2つのルールで借金が減額されます。

① 借金総額から決められる借金減額のルール

・100万円~500万円 ⇒  一律100万円
・500~1500万円  ⇒  5分の1
・1500万円~3000万円  ⇒  一律に300万円
・3000万円~5000万円  ⇒  10分に1

② 持っている財産の額から決められる借金減額のルール

持っている財産の額まで借金が減額されます。
小規模個人再生では「①借金総額から決められる借金減額のルール」「②持っている財産の額から決められる借金減額のルール」のどちらかで算出される額のうち、高いほうの金額まで借金が減額され、これを支払い、残りは免除されるというものです。

例えば、借金が同じ300万円のAさんとBさんがいたとして、Aさんは全く財産を持っていない、Bさんが200万円の財産を持っているという場合があったとします。

Aさんは「①借金総額から決められる借金減額のルール」で借金が100万円に減額され、「②持っている財産の額から決められる借金減額のルール」では財産が0なので、結局100万円に減額され、残り200万円は免除されます。
Bさんも①のルールでは、Aさんと同様に借金が100万円になりますが、②のルールで、持っている財産である200万円は払わないといけないので、結局200万円に減額され、残り100万円は免除されます。

このように、小規模個人再生では、同じ借金額の人でも持っている財産の額によっては減額される額が違ってくることがあります。

もうひとつの給与所得者個人再生のほうは、上記の①②以外に「③可処分所得以上払わないといけない」というものが加わります。そのため、場合によっては③のルールにより、小規模個人再生より支払額が多く(=借金の減額が小さく)なることがあります。

任意整理

任意整理は、破産・免責、個人再生と違い、裁判所を通さない方法です。
具体的には、弁護士等が直接債権者と話し合いをして、毎月の支払い額を減らしてもらったり、今後の利息を取らないようにしてもらったりすることで、借金を支払いやすくするものです。破産・免責、個人再生と違って、法律で決められた基準がないので、どのような内容になるかは話し合い次第です。

任意整理の標準的な内容

① 元金が減額されることはめったにない
② 和解した後の利息はとられないようにしてもらえることが多い(多いというだけで、絶対ではありません)
③ 支払い期間は3~5年のことが多い(多いというだけで、5年超にしてもらえることもあれば、3年より短い支払い期間になることもあります。)

以上のように、任意整理は元金は減額されないので、そういう意味では借金減額にはなりません。しかし、和解した後の利息を取られないようにできれば、利息も借金のうちと考えれば、将来発生するはずの利息分「借金減額」されたとも言えます。

過払い金

最後に、過払い金です。これは、法律が改正される前にグレーゾーン金利というものがあり、グレーソーン金利で借りていた場合、利息制限法所定の利率で計算しなおすと借金額が減ったり、場合によっては返金してもらえたりする場合があるというものです。

しかし、ずっと以前に法律は改正され、グレーゾーン金利での貸し付けはできなくなり、現在は、どの業者も利息制限法の利率の範囲内で貸し付けを行っています。そのため、よほど古くから借入をしているケースでないと、グレーソーン金利で借りていたものを利息制限法所定の利率で計算しなおした結果、借金額が減ったり、場合によっては返金してもらえたりするといったことはありません。
したがって、現在は、過払い金があるという過度な期待はあまりしないほうがいいと思います。