任意整理のメリット・デメリット

任意整理のメリット・デメリット

任意整理にもメリットとデメリットがあります。以下、それぞれについて説明します。

1-1.任意整理のメリット

①一般的なメリット

弁護士に依頼した後は、各債権者からの取立てが止まる。

払い過ぎていたお金を取り戻せる場合がある。

多くの場合は、利息や遅延損害金が一切つかなくなる。または、利息の利率を減らしてもらえる。
(任意整理はあくまで任意の手続きなので、債権者が拒否した場合にまで無利息での和解を強制することはできません。例えば、借り始めてから5年程度以上が経過していない場合、その借入先からは、今後も利息をつけるよう言われる場合があります。ただし、それまで支払っていた利息よりは利率が減ることが多いです。)

②破産、個人再生にはないメリット

自己破産や個人再生のように官報に載ることがありません。
⇒官報とは、政府が発行する新聞のようなもので、自己破産、個人再生の場合はこれに掲載されます。任意整理の場合、官報に掲載されることはありません。(ただし、官報に掲載されても、それを毎日読んでいる人はほとんどいないので、官報の掲載により、破産や個人再生のことが周りに分かってしまうことはめったにありません。)
自己破産のように各種の資格制限、職業制限がありません。
⇒自己破産の場合、一時的に使えなくなる資格(例えば、宅地建物取引主任者)や就けなくなる職業(例えば、警備員、質屋、生命保険募集人、損害保険代理店など)があり、その他遺言執行者になれないなどの制限がありますが、任意整理の場合はその心配がありません。(個人再生にも制限はありません。また、破産でも、免責決定が確定した後は、制限がなくなります。)
時間的拘束が少ない
⇒裁判所を使わないので、裁判所や管財人からの呼び出しによる時間的な拘束はないです。
財産は持っておける
⇒破産の場合、めぼしい財産(日用品や家財道具などは除きます。)は、お金に換えて配当しなければいけないというルールがありますが、任意整理の場合は、そのようなことはありません。
自宅の所有が可能
⇒自宅を所有している場合、破産すると、財産はお金に換えて配当しないといけないというルールにより、自宅を失いますが、任意整理は、住宅ローンは通常通り払いながら、他の債務の整理をするので、自宅は失いません。(個人再生も、特則を使って自宅を残すことは可能です。)
免責が出にくい人でも手続き可能
⇒破産の場合、免責(借金の免除)の許可は、申立により当然にもらえるわけではなく、裁判所の審査があり、例えば、2回目の破産で前の破産から7年以上経過していない場合、ギャンブルや浪費が借金の主な理由の場合などは、免責の許可について慎重な判断がされます。しかし、任意整理は、このような事情とは無関係に、手続きが進められます。
保証人に迷惑をかけない
⇒破産、個人再生は、ご依頼者の都合で債権者を選別することができず、すべての債権者を手続きの対象にしないといけないため、保証人がついている債権者だけ手続から外す、といったことはできません。
従って、保証人がついている債権者については、手続きを取ることにより、保証人に請求が行き、払わなければいけなくなります。
任意整理の場合、その債権者のみ、任意整理の交渉をせずに、今までどおりの支払いを続けることにより、保証人に請求が行かないようにできます。
ローンが終わっていない自動車も維持できる
⇒破産、個人再生は、ご依頼者の都合で債権者を選別することができず、すべての債権者を手続きの対象としないといけないため、自動車のローンだけ払って自動車を維持するということができません。
ローン支払中の自動車については、債権者の担保に入っていることが多いので、債権者に返さないといけません。(場合により管財人により自動車を換価することもあります。)
任意整理の場合は、ローン支払中の自動車を持っておきたい場合は、そのローン会社は、任意整理の対象とせずに今までどおりローンを払い、自動車を維持することができます。

1-2.任意整理のデメリット

信用情報機関のブラックリストに載ってしまうため、数年間は新たな借金やクレジットカードの作成、ローンによる物品購入ができません。
信用情報機関は、主には、銀行系、信販会社系、消費者金融系の3つがあります。
それぞれについては、以下のページを参照してください。
全国銀行協会 >CIC(信販会社系)>JICC(消費者金融系)>

1-3.こんな事案の場合に任意整理をご検討ください

①借金の総額が比較的少ない場合

⇒任意整理は、ひと月あたりの支払額を減らし、利息なしの和解ができることが多いので、借金の支払いを楽にするのに大きな効果があるのは間違いありません。

しかし、全額を免除してもらう破産や、債務の多くを免除してもらう個人再生ほど劇的に借金が減るわけではありません。

従って、任意整理は、破産や個人再生よりは、支払額が多くなってしまいますので、比較的借金総額が少ない方(3年~5年、長くて7年以内に元金の完済が可能な方)に適しています。

一概に、借金総額がいくら以下なら任意整理ができる、といったことは言えません。
その方の収入や生活するのにどれくらいかかるかは人それぞれだからです。

従って、ご自分の借金を3年~5年で完済すると想定した場合、借金の合計額を36(3年=36か月)~60(5年=60か月)くらいで割ると、ひと月あたりにいくら返さないといけないか、がわかるので、おおよそ任意整理できる事案なのかどうかはわかります。

任意整理の必要性が強い場合は、6~7年程度の支払期間であれば、相手も応じる可能性が十分あるので、6~7年払いだと月当たり幾らになるか計算されるといいかと思います。

②債権者の一部に対しては手続きを取りたくない場合

(友人などの個人や勤務先から借入があり、手続きの対象から外したい場合を含む) 

破産や個人再生は、ご依頼者の都合で、手続きの対象となる債権者を選別するといったことはできません。
債権者はすべて手続の対象としなければいけません。

ここでいう債権者とは、ご依頼者にお金の返済を請求できる方(債権者)は全て含まれ、銀行、信販会社、消費者金融会社といった業者だけにはかぎりません。

友人・知人・親戚といった方や、勤務先の場合も、お金を借りたりして返済しないといけない場合は、債権者に含まれます。
この場合、友人・知人・親戚といった方や勤務先を破産や個人再生の手続の対象から外すことができません。
しかし、勤務先を債権者として扱うと、勤務先にも破産した旨の通知が届きますので、解雇される恐れは否定できません。

友人・知人・親戚といった方にだけは弁護士を入れたくないというご要望もあると思います。
この場合、破産や個人再生では無理でも、任意整理であれば、友人・知人・親戚といった方や勤務先を交渉相手から外すことは、可能です。業者のみを相手として任意整理することが可能ということです。

③保証人に迷惑をかけたくない場合

また、債権者の一部にだけ保証人になってもらっている人がいる場合(例えば、奨学金を借りており、親御さんが保証人になっているなど)、破産や個人再生をすると、債権者はご本人からの全額回収ができないので、保証人に請求をすることになります。

こういったことで保証人に迷惑をかけることは何としても避けたい場合は、任意整理であれば、保証人がついている債権者は外して、それ以外の債権者とだけ交渉を進めることが可能です。

④自動車ローンを払って自動車を維持したい場合

また、例えば自動車を買ってローンを組んでいる場合、破産や個人再生をすると自動車は、多くの場合(所有権留保などの)担保に入っていますので、引き上げられてしまいます。
そこで、自動車ローンだけはこれまで通り払って維持したい場合は、任意整理であれば、自動車ローンをはずして、他の債権者とだけ交渉を進めることが可能です。

⑤住宅がある場合

住宅を所有している場合、破産をすると自宅を失ってしまいますので、住宅を維持したい場合は、任意整理が適しています。
また、住宅ローンを支払中の場合で住宅を維持したい場合は、任意整理か、住宅ローン特別条項付の個人再生の申立が適しています。

⑥免責不許可事由があり、借金の免除の許可(免責)がもらえるか心配な場合

破産は、申立により自動的に借金が免除されるわけではなく、裁判所の審査があります。
借金の主な理由がギャンブルや浪費である、または、前の破産から7年以上たっていない場合などは、免責の許可をするのに裁判所は慎重になります。

任意整理であれば、裁判所の審査といったことはありませんので、免責になるかどうかの心配がありません。

また、個人再生でも同様なので、任意整理か個人再生が適しているということになります。

1-4.任意整理する場合に注意していただきたい点

①任意整理後は、新たな借り入れができない点

任意整理の前は、A社から借りて、そのお金をB社への返済に回すといった自転車操業で、返済のやりくりをしていることが多いと思いますが、任意整理後は、借入が一切できないので、和解後の支払は、給与などの収入から生活に必要な分を引いた残りから行います。

②和解後の支払いを滞納すると一括請求される点

任意整理による和解においては、和解により決められた支払を滞納し、滞納額が2回分たまってしまうと、残金を一括で払わないといけないようになっていることがほとんどです。

例えば、ABCの3社と和解し、このうちA社に対し月2万円の支払いをする和解をしたとします。
1回支払が遅れると、滞納額が2万円となりますが、その後、次の支払い日までにこの2万円を払うと、滞納額はゼロに戻ります。

しかし、1回支払が遅れた状態のまま、次の支払日も来て、その支払い日にも2万円の支払いができないと、滞納額の合計が2回分の4万円となります。

こうなると、A社に対して残金を一括で支払わないといけなくなります。(B社、C社にはきちんと払っていた場合は、一括で払わないといけないのは、A社のみですが、B社、C社も同様に滞納額が2回分貯まると、B社、C社にも一括で払わないといけなくなります。)

よって、和解で決められた金額は期日までにきちんと支払続けることが重要です。