老後破産~3~ 高齢者が債務整理する際のデメリット

1 不動産がある場合

住宅を持っている方が借金を抱えている場合、住宅を維持しながら借金を整理したいという理由で個人再生を考えることもあります。個人再生では、持っている資産額以上の弁済をしないといけないというルールがあります。
住宅も、資産としてカウントされます。住宅の場合、住宅の価値から住宅ローンの残りを引いた額がその人が持っている資産額となります。
住宅ローンを組んで、それほど年数がたっていない方は、住宅ローンが多く残っているので、住宅の価値が住宅ローンの残を下回るオーバーローンのことも多く、この場合は住宅の価値はゼロとみなされます。

ところが、高齢者が住宅を持っている場合、住宅ローンを払い終わっているか、かなりの部分を払い終わっていることが多いという問題点があります。
例えば、1000万円の住宅をお持ちの方が500万円の借金を抱えている場合を想定します
仮に住宅ローンを払い終わっているとした場合、1000万円の住宅という資産があるので、個人再生において1000万円以上の支払いをしないといけなくなり、500万円の借金は全く減りません。
仮に、住宅ローンが残っているものの住宅ローン残高が200万円という場合は、住宅の価値1000万円から住宅ローン残200万円を引いた800万円の資産を持っていることになります。この場合も、500万円の借金は全く減りません。
したがって、このような場合は、任意整理をするか、破産をするしかありませんが、任意整理だと少なくとも500万円の元金全額払わねばならず、破産だと住宅を失ってしまいます。

2 親の遺産がある場合

これは、高齢者の方に限った問題ではないのですが、仮に親御さんがなくなっており、親御さん名義のままの資産(不動産など)があると、亡くなった方が資産を持っているという概念は法律上なく、残された配偶者やお子さんに亡くなられた親御さん名義の資産が移転していることになっています。

したがって、借金を抱えた方の親御さん名義のままの資産(不動産)があると、その方は親御さんの資産の法定相続分(例えば、一方の親御さんがご健在で子供が3人だった場合は6分の1)を持っていることになります。

こういった場合、その方は、親御さんの資産の6分の1を持っていることになるので、個人再生の時は、その分資産が増え、持っている資産以上弁済しなければならないというルールから、支払い額が増えたり、破産の場合は法定相続分を他の相続人に買い取ってもらったりしなければならないという問題が出てきます。
高齢者の方は、親御さんも高齢者となり、亡くなられていることも多いと思うので、この問題がより如実になってきます。

3 認知症の場合、成年後見の申し立てが必要

借金を抱えた方が認知症の場合、成年後見の申し立てが必要となります。
認知症の方は判断能力がなく、破産する、弁護士に依頼するといったことを理解できず、その方が単独で破産したり、弁護士に依頼したりするといったことができません。
そこで、親族がまずは成年後見の申立をし、成年後見人に選任された方が弁護士等に依頼して破産することになります。
そのため、成年後見人選任に、時間や手間、お金がかかるというデメリットがあります。

また、成年後見人は破産を弁護士に依頼するだけが仕事ではなく、認知症の方の財産管理、身上監護全般の責任を負います。したがって、成年後見に選任された方の責任が重くなり、例えば、資産の管理の結果等を報告しなければならないといった、事務的な手続きの負担が増えます。

ただし、悪いことばかりではありません。例えば、認知症の方が誤って高い契約等をさせられた場合、成年後見人がいれば、その契約を取り消せます。また、成年後見人は、認知症の方の銀行口座のお金を下ろしたり、認知症の方のために使ったりする財産管理の権限があります。そのため、認知症であることが銀行に知られて口座が凍結された場合も、成年後見人が口座からお金を引き出し使うことができます。