奨学金-3-日本学生支援機構の奨学金②~連帯保証人と保証人の違い~

お子さんが大学や専門学校に行く際に日本学生支援機構から奨学金を借りる場合、「機関保証」のケース、親御さんなどの親族からお二人が保証人になる「人的保証」のケースがあることを別の記事で書きました。
後者の保証人が二人いるケースですが、一方は連帯保証人、もう一方は連帯が付かない保証人(単純保証人と言ったりします)になっています。

ここでは、連帯保証人と連帯が付かない「単純保証人」はどのように違うのか、解説したいと思います。

親御さんなど親族が保証人になった場合、お子さんが奨学金を払えなくなると、連帯保証人、単純保証人に請求が行くことになります。
このような場合に、連帯保証人と単純保証人には、大きな違いがあります。

まず、連帯保証人(お父さん、お母さん等)は、保証人が何人いても、奨学金全額を支払う義務を負います。

一方、単純保証人(おじさん、おばさん等)は、保証人が、日本学生支援機構のように二人いる場合は、民法427条の分別の利益があり、奨学金の2分の1についてのみ支払い義務を負います。つまり、連帯保証人が負う義務の半分になります。日本学生支援機構のケースではありませんが、保証人が仮に3人いるケースでは、単純保証人である場合に限りますが、債権総額の3分の1しか支払い義務を負いません。

また、単純保証人には、催告の抗弁(民法452条)、検索の抗弁(民法453条)がありますが、連帯保証人にはこのような抗弁がありません。この違いは、どういう結論になるかというと、日本学生支援機構は、まず、連帯保証人(お父さん、お母さん等)に請求しなければいけません。仮に、同機構が単純保証人に請求すると、単純保証人(おじさん、おばさん等)は催告の抗弁を使い、自分に請求する前に連帯保証人(お父さん、お母さん等)に請求しろ、ということができます。また、連帯保証人に資力がある場合、同機構は、連帯保証人から回収できますので、単純保証人に支払を請求したり、差押をしたりはできません(検索の抗弁)。
つまり、単純保証人(おじさん、おばさん等)は、機構が連帯保証人に請求し、連帯保証人に資力がなく払えないという状況になった場合にのみ、奨学金の2分の1の額を返済しなければならない状況になります。

札幌高裁令和4年5月19日判決(判例タイムズ1516号126頁)は、分別の利益がある単純保証人が本来は2分の1払えばいいのに、そのことを知らずに(錯誤で)全額払った場合に、2分の1を返せといえるかどうか、が争われた事案です。
裁判所は、2分の1しか払わなくていいことを知らずに払った場合は、民法707条1項(錯誤によって債務の弁済をした場合)に当たり、返せということができる、と判決しました。