自己破産後の人生~どんな影響が?普通の暮らしができるのか?

自己破産をして免責を得ると、借金は払わなくてよくなります。
つまり、自己破産とは、借金により経済的な窮地に陥った人がそこから脱して、普通の生活に戻れるようにする制度です。

しかし、自己破産をすることによって、その後の人生に大きな影響がでるのではないか?心配されている方も多いかと思います。
結論から言うと、影響は確かにありますが、普通の生活を営むことはおおむね可能です。

この記事では、以下の2点についてご説明します。
【1】自己破産後の人生に及ぼす影響
【2】自己破産後の人生に影響のないもの

自己破産後の人生に生じる影響

【目次】
1_1. 今後の借入・ローン・クレジットカードの利用ができない
1_2. 官報にのる
1_3. 保証人になってもらっている人への影響
1_4. ローンやクレジットで買ったものはとられる恐れがある
1_5. 仕事への影響があるのはどんな時か?
1_6. 住まいはどうなる?
1_7. 財産の中で失われるものがある
1_8. また借金して破産したらどうなる?
1_9. 破産しても払わないといけないもの(税金、社会保険料など)

1_1. 今後の借入・ローン・クレジットカードの利用ができない

新たに銀行・貸金業者等から借り入れする場合や、ローン、クレジットカードの申し込みには必ず審査があります。そして、審査の際、信用情報機関に掲載されていないかをチェックされます。
破産をすると、破産をしたことが信用情報に掲載されます。その結果、銀行・貸金業者、ローン会社、クレジットカード会社の審査が通らず、新たな借入、ローンを組んでのモノの購入、クレジットカードの作成と使用ができなくなります。住宅ローンも組めなくなりますし、スマートフォンの分割支払いも審査が通らなくなります。
つまり、しばらくは現金だけで生活していかないといけなくなります。
ただし、先にチャージして使うプリペイドやデビットカードの使用はできます。

1_2. 官報にのる

官報とは政府が国民に対するお知らせをするもので、新聞のような紙面もあり、インターネットでも見られます。
国民に対するお知らせという性質上、見ようと思えばだれでも見られます。
破産をすると官報に掲載されるので、制度上は破産したことは公開されることになっています。
しかし、官報を読んでいるという人は事実上あまりいません。
したがって、官報に載っていたことで、破産したことが周りに知れ渡ると言ったことは、ほぼ起こらないです。

1_3. 保証人になってもらっている人への影響

借入や、物をローンで買ったり、奨学金を借りたりするときに、保証人になってもらっている人がいると、破産をすると、保証人が、払っていかなければいけなくなります。
このため、破産をする場合は、保証人に迷惑をかけることを、ご了解いただかないといけません。

1_4. ローンやクレジットで買ったものはとられる恐れがある

ローンを組んだりクレジットカードで決済したりして買ったもののうち、中古市場で売却できそうなもの(具体的には、車、テレビ、パソコン、健康器具、スマートフォン、タブレット、高級時計、宝石など)は、ローンやクレジットをすべて払い終わるまでは、ローン会社、クレジット会社が担保に取っています。
破産をして今後の支払いをしないとなった場合、ローン会社やクレジット会社は、物を回収して売却することで少しでも回収しようとします。したがって、上記に挙げたような、ある程度価値のあるものは、ローン会社やクレジット会社に返さないといけません。

1_5. 仕事への影響があるのはどんな時か?

破産をすると、使えなくなる資格や就けなくなる仕事があります。
使えなくなる資格や職業は数としてはかなりあります。全部紹介するのは不可能ですが、マイナーな資格も多いです。

具体例を挙げると、以下のような資格や職業があります。
宅地建物取引業、宅地建物取引主任者宅建士、質屋、行政書士・社会保険労務士・税理士等の士業、貸金業者、警備業者、警備員、一般建設業、特定建設業、公証人、証券業、証券取引外務員、生命保険募集人及び損害保険代理店、旅行業者、旅行業務取扱主任者、調教師または騎手 など

このような資格や職業の方は、破産をすると、一旦その仕事を辞めないといけません。
したがって、こういった資格や職業の方は、制限が生じない、個人再生をすることが多いです。
また、免責を得れば制限が取れますので、再び資格や職業を得ることは可能です。免責が出ない場合は、10年間は制限が取れません。

1_6. 住まいはどうなる?

住まいに関しては、まず、住宅をお持ちの場合は住宅を売却し、債権者に配当しないといけませんので、住まいを失うことになります。
賃貸物件にお住いの場合は、賃料を滞納して退去の裁判を起こされるといった事情がない限り、住み続けることは可能です。

1_7. 財産の中で失われるものがある

財産のうち一定額以上のものは、売却して債権者に配当しないといけませんので、失うことになります。
以下、具体例を挙げます。

不動産
土地、建物、マンションといった不動産は、住まいのところでご説明したとおり、売却しなければいけません。住まい以外に不動産を持っている場合も同様に、売却して債権者に配当しないといけません。

生命保険
掛け捨てであれば、解約はしなくていいです。
しかし、貯蓄型など、解約したら戻ってくるお金がある場合、すべての保険の解約返戻金の額が20万円以上だと(※金額は福岡地方裁判所のルールです)解約しなければなりません。

自動車
自動車については、ピンからキリまであるので一概には言えません。
しかし、初度登録から5年経過していない車、排気量2500cc以上の車、外国車は売却して、債権者に配当しないといけません(※基準は福岡地方裁判所のルール)ので、失う可能性があります。これに当たらない車は、個別に判断されると思います。
しかし、車を通勤や仕事で使っている人は多いと思います。
こういった方は、管財人にお金を払って車を買い取ることで、車を維持できる場合が多いです。

退職金
退職金は給与の後払い的性質を有することから、退職金については、その8分の1が債権者に配当すべき財産とみなされます。ただし、これは定年まで勤めた場合の退職金額ではなく、破産手続きの開始がされた時点での退職金額です。
しかし、実際に退職するわけではないので、退職金の8分の1にあたる金額を給与などから積み立てるように言われることが多いです。

預貯金
すべての預貯金の合計が20万を超える場合(※基準は福岡地方裁判所のルール)は、債権者に配当すべき財産となります。したがって、まとまった預貯金をしている場合、管財人に渡さないといけません。
ただし、給与が入ったことで一時的に20万を超えたような場合までは、債権者に配当しないといけない財産になることは通常ありません。

株、投資信託など
このような資産も、売却すれば債権者に配当ができますので、持ち続けることはできません。

相続財産
お父さんやお母さんが亡くなり、亡くなった方の名義のままになっている資産は、遺産を分ける前であっても、お父さんやお母さんが亡くなられた時点で、残された配偶者、お子さんに法定相続分の財産が移っていることになります。
したがって、このような遺産がある場合は、他の相続人に買い取ってもらう等する必要があります。
ただし、亡くなられてから3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述という手続きを正式にとれば、破産される方の財産からは外れます。

1_8. また借金して破産したらどうなる?

破産した方が再度借金して破産しないといけなくなった場合、2回目の破産においては、免責(借金の免除)の審査は多少厳しくなると思います。しかし、当事務所の経験上、2回目の破産の方は結構な数がいらっしゃいましたが、おおむね免責は得られております。
しかし、3回目の破産となると、免責が出るかどうか、未知数のところがあります。
したがって、破産を何回もすると、だんだん免責がおりにくくなるので、破産した方は、今後の破産がしにくくなるという影響があります

1_9. 破産しても払わないといけないもの(税金、社会保険料など)

税金、社会保険料の滞納分、養育費、婚姻費用などは、破産しても免除の対象ではないので、払わないといけません。

自己破産後の人生に影響のないもの

逆に、以下のようなものについては、破産しても影響がありません。
⑴ 年金はとられない
⑵ 選挙権はなくならない
⑶ 戸籍や住民票には掲載されない
⑷ 職場にばれることはあまりない。
⑸ 転居や海外旅行も制限されない
⑹ 新たな資産形成はできるし、それを奪われることはない