2025(令和7)年8月18日、脱毛サロン大手『ミュゼプラチナム』を運営するMPH株式会社の破産開始決定がされました。
こういった脱毛サロンやエステ大手の破産の特徴は、何回かに分けて実施される脱毛やエステのコースの料金を先払いしたり回数券を買ったりしたのに、そのサービスが受けられず、そういった利用者が債権者になるので、サービス利用者が多ければ多いほど、債権者数が多くなる点にあります。
この脱毛サロン(ミュゼプラチナム)も、有償残回数が残っている債権者(サービス利用者)は約123万人で、未消化金額(脱毛コースやエステコースの料金を先払いしたが、サービスを受けられなかったもの)の合計は約124億円にも上るそうです。
これらのサービスを受けられなかった利用者が有する債権は、先取特権等の優先的な支払いを受けられる権利はないので、他の銀行等の債権者と同列で、破産管財人の業務において、決まった配当率の金額の配当を受けられるだけで、全額払い戻しなどはほとんど期待できません。
話は変わりますが、ミュゼプラチナムを運営するMPH株式会社の破産は、債権者が申し立てをしています。
個人でも法人(会社)でも、自らが破産申立をすることを「自己破産」といいますが、この際は、MPH株式会社自身が破産を申し立てたのではなく、債権者が申立てをしています。
債権者が申し立てる破産の特徴としては、破産の要件を満たすかの証明が難しい点があります。法人破産の要件は、債務超過(資産より負債が多いこと)または支払い不能です。会社自身が破産する場合は、非常貸借対照表といって、現在の資産と負債を前提として、資産の額も簿価ではなく実勢価格を表記する貸借対照表を提出するので、債務超過であることが簡単にわかります。したがって、破産の申し立てから破産手続きを始める決定まで、それほど時間がかかりません。
しかし、債権者が申し立てる場合、債権者は会社の決算書をも持っておらず、現状の資産や負債の状況も知っているわけではないので、法人破産の要件である、債務超過または支払い不能を証明するのが容易ではありません。
したがって、ミュゼプラチナムを運営するMPH株式会社の場合も、債権者の申立が2025(令和7)年5月16日、破産手続き開始決定が8月18日と、破産の開始までに3か月を要しています。
また、債権者申し立ての破産は、債権者が管財人の費用を用意しなければなりません。ミュゼプラチナムのような大手の脱毛サロンとなると、債権者の数も相当多いので、かなりの多額の管財費用の予納が必要になったと思います。しかし、万が一、会社にお金が残っていないと、債権者が立て替えた管財人の費用を返してもらえません。したがって、ミュゼプラチナムのような大手の脱毛サロンで、倒産したとはいえ、ある程度の資産が残っている場合でないと、破産を申し立てたところで、立て替えた管財人の費用分損をするだけなので、債権者破産の申し立てはされません。
一方で、債権者が申し立てる破産のメリットとしては、破産手続きの配当で、ある程度の債権の回収ができることです。今回の脱毛サロン大手のように、経営が破綻しているのに、自ら破産を申し立てない場合、最初は資産がある程度残っていても、それらが一部の債権者への支払いなどに充てられたりして、時の経過とともにどんどん減っていくことが考えられます。
それで、債権者のほうから破産の申し立てをして管財人を選任してもらえば、脱毛サロン大手の資産管理権限は管財人に移り、一部の債権者への支払いといった、資産の流出は防ぐことができます。残った資産からの配当に限られますが、ある程度の債権の回収ができるようになります。
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