破産すると引っ越しできない?申し立て前後の違いを弁護士が解説
「自己破産を考えているけれど、家賃が安い物件へ引っ越したい」
「転勤が決まりそうだけど、自己破産に影響はある?」
「持ち家を手放すことになるので、新しい住まいを探さなければならない」
このような理由から、自己破産の手続き中に引っ越しが必要になる方は少なくありません。
一方で、「自己破産をすると、自由に引っ越しができなくなるのではないか?」と不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。
結論からいうと、自己破産をしても引っ越しが禁止されるわけではありません。
ただし、「破産を申し立てる前」と「申し立てた後」では、引っ越しに関するルールが異なります。
ここでは、破産「申し立て前」「申し立て後」それぞれの場合について詳しくご説明します。
《目次》
1. 弁護士に依頼してから破産を申し立てるまでの引っ越し
2. 破産申し立て後の引っ越し
2-1. 引っ越しには裁判所や管財人の許可が必要
2-2. 引っ越しても、係属する裁判所は変わりません
3. まとめ
弁護士に依頼してから破産を申し立てるまでの引っ越し
弁護士に自己破産を依頼したからといって、すぐに裁判所へ申し立てをするわけではありません。
申し立てには、債権者一覧や家計収支表など多くの資料を準備する必要があります。また、裁判所へ納める費用を積み立てながら準備を進めるケースもあるため、相談・依頼から申立てまでには一定の期間が空くことが一般的です。
この期間であれば、引っ越しは原則自由です
まだ裁判所へ破産申し立てをしていないため、この時点では裁判所や破産管財人の許可を得る必要はありません。
そのため、転勤や住み替えなどの事情があれば、自由に引っ越すことができます。
ただし、不必要な引っ越しは避けた方がよいでしょう
自由に引っ越せるとはいえ、自己破産を予定している方が、
• 必要以上に家賃の高い物件へ転居する
• 特に理由がないのに引っ越し費用を支出する
といった事情があると、「なぜそのような支出をしたのか」と裁判所から説明を求められる可能性があります。
場合によっては、免責(借金の支払い義務を免除してもらうこと)の判断に影響するおそれもあります。
そのため、転勤、家賃を下げるための住み替え、住宅を処分する必要があるなど、やむを得ない事情がある場合を除き、申立て前の引っ越しは慎重に検討することをおすすめします。
引っ越すと申し立て先の裁判所が変わることがあります
自己破産は、原則として現在の住所地を管轄する裁判所へ申し立てます。
そのため、申し立て前に引っ越しをすると、申し立て先の裁判所が変わる場合があります。
例えば、東京地方裁判所では、東京都外に住んでいても東京都内で勤務している場合に、東京地方裁判所への申立てが認められる運用があるようです。
一方、福岡地方裁判所では、そのような運用は基本的に行われていません。そのため、福岡県内で引っ越しをした場合でも、住所地によって管轄裁判所が変わる可能性があります。
【福岡地方裁判所本庁の管轄地域】
次の地域にお住まいの場合は、福岡市中央区六本松にある福岡地方裁判所本庁が管轄となります。これらの地域内で引っ越しをする場合は、基本的に申立先は変わりません。
• 福岡市
• 糸島市
• 筑紫野市
• 春日市
• 大野城市
• 太宰府市
• 那珂川市
• 古賀市
• 宗像市
• 福津市
• 朝倉市
• 糟屋郡
• 朝倉郡
一方で、上記の福岡地方裁判所本庁の管轄地域以外の地域へ転居した場合は、以下の住所地を管轄する裁判所へ申立てを行うことになります。
• 小倉支部
• 行橋支部
• 久留米支部
• 柳川支部
• 大牟田支部
• 八女支部
• 飯塚支部
• 直方支部
• 田川支部
また、県外へ転居した場合は、転居先を管轄する地方裁判所へ申し立てることになります。
破産申し立て後の引っ越し
2-1. 引っ越しには裁判所や管財人の許可が必要
裁判所へ自己破産を申し立てた後は、申し立て前とは異なり、自由に引っ越しをすることはできません。
もっとも、引っ越し自体が禁止されるわけではありません。裁判所と破産管財人の許可を受ければ引っ越しは可能です。
申し立て後に引っ越しをする場合は、事前に裁判所と破産管財人へ「上申書」を提出し、許可を受ける必要があります。
上申書には「引っ越し先」「引っ越しの理由」などを記載します。
例えば、以下のような事情であれば、通常は許可が認められることが多いでしょう。
• 家賃を下げるために転居する
• 転勤に伴って引っ越す
• 自宅を売却・明け渡すため新居へ移る
引っ越し費用の準備も重要です
引っ越しには、敷金・礼金、仲介手数料、引っ越し業者への費用など、まとまったお金が必要になります。
自己破産を予定している以上、新たに借金をして費用を準備することは適切ではありません。
そのため、引っ越し費用は、以下のような方法で用意することになります。
• 毎月の給与などから計画的に準備する
• ご家族や親族から援助を受ける
なお、親族から返済不要の援助を受ける場合は借金には当たりません。
2-2. 引っ越しても、係属する裁判所は変わりません
引っ越しても裁判所が変わることはありません
申し立て前とは異なり、破産申し立て後に引っ越した場合は、原則として手続き中の裁判所が変わることはありません。
例えば、福岡地方裁判所本庁へ申立てをした後に福岡県内の別の地域や県外へ転居したとしても、通常は事件が他の裁判所へ移送されることはなく、最初に申立てをした裁判所でそのまま手続きが進められます。
まとめ
自己破産をしても、引っ越しが一切できなくなるわけではありません。
引っ越しができるかどうかは、自己破産の「申し立て前」か「申し立て後」かによってルールが異なります。
• 申立て前:原則として自由に引っ越しが可能。ただし、不必要な支出となる引っ越しは避けた方がよい。
• 申立て後:裁判所と破産管財人の許可が必要。ただし、家賃を下げるための転居や転勤、自宅の明渡しなど、合理的な理由があれば許可されることが一般的。
• 申し立て前の引っ越しでは、住所変更により申立先の裁判所が変わる場合がある。一方、し後の引っ越しでは、原則として手続き中の裁判所が変わることはありません。
引っ越しの時期や方法によっては、破産手続きに影響することがあります。自己判断で進める前に、担当弁護士へ相談しながら進めることをおすすめします。