親の借金は子供が返さなければならない?相続・保証人が注意すべき点

「親に借金があると、自分が返済しなければならないのではないか」と不安に感じる方は多いと思います。
結論からいうと、原則として、親の借金を子どもが返済する義務はありません。
借金は、借りた本人だけが返済義務を負うのが原則だからです。

もっとも、次のような場合には、子どもが親の借金を支払わなければならなくなる可能性があります。
・親が借金を残したまま亡くなった場合
・子どもが親の借金の保証人になっている場合

以下で、それぞれ詳しく解説します。

1. 原則として親の借金を子どもが返済する義務はない

2. 親の借金を子どもが返済しなければならないケース① 親が借金を残して亡くなった場合
 2_1. 借金も相続の対象になる
 2_2.「すべてAに相続させる」という遺言がある場合
  2_2_1. 債権者がAさんに全額請求するケース
  2_2_2. 債権者が他の相続人に請求するケース

3. 親の借金を相続したくない場合の対処法「相続放棄」
 3_1. 親の死亡から3か月以上経って借金が判明した場合

4. プラスの財産だけ相続することはできる?

5. 限定承認という方法

6. 親の借金を子どもが返済しなければならないケース② 子どもが保証人になっている場合

7. 親の借金でお悩みの方は早めにご相談ください

1. 原則として親の借金を子どもが返済する義務はない

親に借金があっても、通常は子どもに返済義務はありません。
借金は契約をした本人が負担するものであり、家族だからという理由だけで返済義務が発生することはないからです。
ただし、例外的に、子どもが借金を引き継ぐケースがありますので注意が必要です。


2. 親の借金を子どもが返済しなければならないケース① 親が借金を残して亡くなった場合

親が借金を残したまま亡くなると「相続」が発生します。
相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続人に引き継がれます。

(事例)父親が900万円の借金を残して死亡し、相続人が次の4名だったケースを考えます。
・母親Wさん 
・子どもAさん 
・子どもBさん 
・子どもCさん 

2_1. 借金も相続の対象になる

相続人は、プラスの財産だけを受け取り、借金だけを放棄することはできません。
相続する場合は「預貯金」「不動産」「株式」などの財産だけでなく、「消費者金融の借金」「ローン」「事業上の負債」 なども引き継ぐことになります。

また、各相続人が負担する借金は、通常、法定相続分に応じて決まります。
父親が900万円の借金を残して死亡し、相続人が次の4名だった事例では、法定相続分は次のとおりです。
・母親Wさん:2分の1 → 450万円 
・子供Aさん:6分の1 → 150万円 
・子供Bさん:6分の1 → 150万円 
・子供Cさん:6分の1 → 150万円 

2_2.「すべてAに相続させる」という遺言がある場合

では、父親が遺言書で「財産はすべてAさん(子供)に相続させる」や「相続分はすべてAさんとする」 と書いていた場合はどうなるのでしょうか?


2_2_1. 債権者がAさんに全額請求するケース

債権者(貸主)が遺言書どおりAさんが借金全額を引き継ぐことを承認した場合、Aさんが借金全額を負担します。
この場合、Wさん、Bさん、Cさんは請求を受けないことになります(民法902条の2但書)。


2_2_2. 債権者が他の相続人に請求するケース

一方で、債権者は遺言書に拘束されません。

たとえば、債権者がBさんに対して法定相続分である150万円を請求した場合、Bさんは、「遺言でAさんが全部相続することになっているから払わない」と主張して拒否することはできません(民法902条の2 本文)。
つまり、遺言書があっても、債権者は法定相続分に従って各相続人へ請求できる場合があります。

さらに、債権者は900万円の借金を「Bさんへ150万円請求する」のと同時に「Aさんへ残り750万円を請求する」という対応をとることもあります。

このように「遺言書で他の相続人が全部相続することになっているから、自分には借金の責任がない」とは限りませんので注意が必要です。

3. 親の借金を相続したくない場合の対処法「相続放棄」

親の借金を引き継ぎたくない場合は「相続放棄」を行う必要があります。
相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったことになります。


・相続放棄の期限
相続放棄には期限があります。
原則として「親が亡くなったことを知ってから3か月以内」に手続きをしなければなりません。


・相続放棄の手続き
相続放棄は、単に「放棄します」と口頭で伝えるだけでは認められません。

家庭裁判所へ以下の書類をを提出する必要があります。
・相続放棄申述書 
・戸籍などの必要書類 
を提出する必要があります。

正式な手続きを行わなければ、相続放棄は成立しません。

3_1. 親の死亡から3か月以上経って借金が判明した場合

親が亡くなってからかなり経ってから借金が発覚するケースもあります。
この場合でも「借金があることを知ってから3か月以内」であれば、相続放棄が認められる可能性があります。

ただし、すでに相続財産を処分したり使ったりしている場合には「相続を承認した」と判断され、相続放棄できなくなることがあります。
そのため、借金が判明した場合は、早めに弁護士へ相談することが重要です。

4. プラスの財産だけ相続することはできる?

結論として「プラスの財産だけ相続する」「借金だけ放棄する」ということはできません。
相続するなら、財産も借金もまとめて引き継ぐことになります。

そのため、以下のケースでは、相続するか相続放棄するか、慎重な判断が必要になります。
・実家の土地や建物は残したい
・しかし、借金は引き継ぎたくない

5. 限定承認という方法

相続には「単純承認(すべて相続する)」「相続放棄(すべて放棄する)」以外に、「限定承認」という制度もあります。


・限定承認とは
限定承認とは「相続したプラスの財産の範囲内で借金を支払う」という制度です。

たとえば「プラスの財産:500万円」「借金:1000万円」 だった場合、500万円までは返済しますが、超えた分については支払う必要がありません。


・限定承認の注意点
限定承認は、相続人全員が共同で行わなければなりません。

父親が900万円の借金を残して死亡し、相続人が次の4名だったケース事例では、
Wさん(母親)、Aさん(子供)、Bさん(子供)、Cさん(子供) の全員で手続きをする必要があります。
そのため、実務上は利用が難しいケースも少なくありません。

もっとも、以下のような場合には、有効な選択肢になることがあります。
・財産もある
・借金もある
・相続放棄すべきか判断が難しい

6. 親の借金を子どもが返済しなければならないケース② 子どもが保証人になっている場合

親の借金について、子どもが保証人になっている場合は注意が必要です。
保証人になると、親本人が返済できなくなった場合、保証人である子どもに請求が来ます。


• 保証人になるリスク
親が現在きちんと返済していても「病気」「失業」「事業悪化」 などにより、将来返済できなくなる可能性があります。
その場合、保証人である子どもが返済義務を負うことになります。

特に「家族だから大丈夫」という理由だけで安易に保証人になるのは危険です。
事業承継など特別な事情がある場合を除き、親の借金の保証人になることは慎重に検討すべきでしょう。

7. 親の借金でお悩みの方は早めにご相談ください

親の借金に関する問題は、
・相続放棄の期限
・相続財産の調査
・債権者対応
・限定承認の可否
など、専門的な判断が必要になるケースが少なくありません。

特に、相続放棄には期限がありますので、「借金があるかもしれない」と思った段階で、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。